シネマティック・アーキテクチャ論

シネマティック・アーキテクチャを定義する

オフェリアの再来(緒方恵一)

シネマティック・アーキテクチャを直訳すれば映画的建築となるが、その定義について、CATが現在も研究・考察中のため、現時点では仮説的な問題提起とする。今後の実験や検証の結果、修正されるかもしれず、作業はシネマティック・アーキテクチャが定義され尽くされるまで続くことだろう。もちろん、シネマティック・アーキテクチャ東京だけが正解を持つわけでは決してないので、世界諸氏の研究もぜひ参照してほしい。

1.空間利用者が「映画を観ている」ように感じさせる何かがシネマティック・アーキテクチャか?

2.映画的シークエンス(つまり回遊性)を持つ何かがシネマティック・アーキテクチャか?

3.映像言語をデザインやコンセプトに用いた何かがシネマティック・アーキテクチャか?

4.映画的に物語性や叙述が使われている(つまり言葉を持つ)何かがシネマティック・アーキテクチャか?

5.映像装置を含む)映画館的な要素を持つ何かがシネマティック・アーキテクチャか?

6.映像的自然現象を取り入れた何かがシネマティック・アーキテクチャか?

7.記憶や意識の流れに働きかける何かがシネマティック・アーキテクチャか?

8.特定の映画のある部分からインスパイアされた何かがシネマティック・アーキテクチャか?

9.あるいは、上記の映像的建築を制作するプロセスがシネマティック・アーキテクチャか?

10.ならば、建築的映画(映像)はどうか?

11.そもそも、映像(映画)的建築、建築的映画(映像)との区別は必要か?

建築物のファサードや一部分のみが映像や光の要素を含むことにより映像的に見える建築は多く存在する。しかし、CATは、アーキテクチャの捉え方において、あくまで、上記の要素を用いた表現やデザインを「シネマティック・アーキテクチャ」とみなし、方向性、目標の参考例として考えている。

*CATエッセンシャル・ワークショップ・セミナー「シネマティック・アーキテクチャとは何か?」「建築的に映画を見てみよう」(2015)およびワークショップ「映画から建築へ シネマティックアーキテクチャの可能性」(2023)より