シネマティック・アーキテクチャ論

(身体性を有する物理的建築物としての)映画的建築

サヴォワ邸(1931)ル・コルビジェ設計

映画的建築において、これまで直接的、具体的に映画について言及し、「映像的な」作品を実践している建築家は、ロベール・マレ=ステヴァン、鈴木了二を始め、ベルナール・チュミ、スティーヴン・ホール、レム・コールハース、ユハニ・パラスマ程度だろう。最近、ル・コルビジェと映画、写真について書かれた本「LC Foto, Le Corbusier, Secret Photographer」(2013)がスイスから出版された。本書ではコルビジェの映画に関する知られざる興味が、彼の撮影した16mm映画や写真に加え詳細に亘り分析されており、いかに彼がその動きや映り変わる幻影空間、つまり映画に魅了されていたかが分かる。はたして、セルゲイ・エイゼンシュテインの代表作『戦艦ポチョムキン』(1925)が公開された時、コルビジェはそれを見たのだろうか。また、もしそうなら1928年から設計が始まる彼の代表作「サヴォア邸」(1931年完成)は、その映画作品のシークエンスやスペクタクルからの影響を強く受けたものではないだろうか。CATは、2015年にサヴォア邸を実踏再調査し、シークエンスから生み出された建築であると確信している。