ワークショップ |きっと、会うたこともない、誰かのため(に)シーズン3
富山を始めとする北陸地方では、その地を舞台にした映画・アニメ・マンガ・小説など、驚くほど多くの文芸作品が生み出されてきました。それらの作品の”描かれた女性たち”に注目し、その地の女性像や生き方や考え方、物語での役割などを抽出し、構築、表現することで、皆で考え、語り合いながらまちのビジョンや、まちづくりのヒントをさぐるワークショップです。映像・建築・文学・サブカル・アートにご興味ある方はどなたでもご参加可能。簡単な作品(平面や立体)を作りますが、専門知識やクリエイティブ・スキルは必要ありません。ご好評につき、2016年秋、2017年夏に続く3回目の開催となります。今回は、参加者の方々にはじっくり考えながら取り組んでいただけるように、ワークショップと展示・ディスカションを2期に分ける余裕を持ったスケジュールとしました。これまで、富山、北陸、内外の人々が”感性を共有”する機会として創造的なつながりができています。どうぞ気軽においで下さい。
*「きっと、会うたこともない、誰かのため」:
高岡市西藤平蔵の旧家をモデルにした木崎さと子による小説『青桐』(1984年第92回芥川賞受賞作品)より
2018年10月の展示、ワークショップ他イベント情報はこちら
○プレセッション(事前説明会)
会場:
クルン高岡TAKAOKA B1 STAGE (富山県高岡市下関町6-1 クルン高岡B1F)
( アクセス)(フロアガイド)
プレセッション1 (終了しました)
日時:
1月28日(日)14:00 -16:00 「事前説明会:富山・北陸の作品を見てみよう」引き続き「ミニ・ワークショップ」
会場:
クルン高岡TAKAOKA B1 STAGE (富山県高岡市下関町6-1 クルン高岡B1F)
( アクセス)(フロアガイド)
参加方法:
参加費無料/予約不要/直接会場においで下さい
プレセッション2(終了しました)
日時:
3月31日(土)17:00 -18:30 「気楽なカフェ・スタイルで:富山・北陸の作品の魅力」
4月1日(日)14:00 -15:30 「気楽なカフェ・スタイルで:富山・北陸作品の女性たち」
会場:
ギャラリーVenere (富山県高岡市駅南5-3-1/高岡駅より徒歩1分)
参加方法:
参加費無料/予約不要/直接会場においで下さい
*資料準備にご協力頂ける方は(メール)にてご予約下さると有り難いです
プレセッション3(終了しました)
日時:
4/2(月)13:30 -15:00 「作品紹介&ディスカション〜富山・北陸作品とそこに描かれた女性たち〜」
会場:
高岡市男女平等推進センター(ウイング・ウイング高岡 6F/富山県高岡市末広町1-7)
○ワークショップ
日時:
2018年5月18日(金)〜20日(日)10:00〜12:00/13:00〜15:00(3日とも)
*上記のどのセッションもご参加可能です。
参加方法:
氏名、所属、連絡先を記入のうえ、事前に メールにてご予約下さい。
* 事前に北陸作品をリサーチして頂くことをお勧めしています。可能な方は予約時にお知らせ下さい。
参加費:
500円(材料費、資料代)全セッション
会場:
クルン高岡TAKAOKA マルチルーム (富山県高岡市下関町6-1 クルン高岡B1F)
( アクセス)(フロアガイド)
*高校生以上どなたでもご参加可能です。(中学生の方はご相談下さい) *エントリーいただく頂く際に、お好きな、または気になる北陸の作品がありましたらお知らせ下さい(任意です)。
*市外、県外、北陸以外の方、グループでのご参加も歓迎します。
一般の方、社会人の方はもちろん、建築、都市計画、デザイン、美術系専攻の大学生の方のご参加も歓迎します。
*ボランティア・スタッフを募集しています。(シネマティック・アーキテクチャの手法や魅力に企画段階より接していただけます)
* English speakers are welcomed. Please have a look at our English website.(英語のできる方もご参加できます)
* ご質問もお気軽にどうぞ。
○展示
10月11日(木)〜15日(月)11:00〜18:00(最終日は16:00まで)
これまでのワークショップ参加者による表現を中心にご紹介
○ギャラリー・トーク「展示作品解説」および「シネマティック・アーキテクチャ東京とは 〜これまでの活動と作品」
10月11日(木)14:00〜15:00/10月13日(土)16:00〜17:00/10月14日(日)16:00〜17:00
○ディスカション
「描かれた富山・北陸の女性から学ぶ未来、まちづくり」
10月13日(土)11:00〜12:00
参加者による表現や北陸を描いた作品からまちづくりのヒントを探る気軽なディスカション
○ワークショップ
ワークショップ1「万葉集に描かれた北陸の女性たち」:
10月14日(日)14:00-16:00 予約制 参加費500円(資料代・資料代)
大伴家持の越中の女性を詠う句を選び、絵短冊・絵手紙を作ってみましょう。万葉集の知識や表現スキル不問。どなたでもご参加下さい。
ワークショップ2「小説『青桐』読書会」(ファシリテーター:自然農実践者・磯辺文雄さん):
10月15日(月)14:00-16:00 予約制 参加費500円(資料代)
富山県高岡市を舞台にした木崎さと子の小説『青桐』(第92回芥川賞受賞作)のお好きなページを読み合います。本作を、文学としてだけでなく、「自然のために生き終えるには?」など、地球環境や、生き方のヒントとしても考えます。『青桐』をご存知でない方もどうぞ気軽にご参加ください。(磯辺文雄[イソップ]さんは、富山県出身。富山県南砺市と沖縄を往復しながら暮らす自然農実践者。30年ほど前より『青桐』読書会を開催している。)
ワークショップ3「きっと、会うたこともない、誰かのため(に) シーズン3 パート2」:
10月11日(木)-15日(月)11:00-14:00(最終日14:00まで) 予約制 参加費500円(材料費・資料代)
今回の展示テーマ、「(富山を中心とする)北陸を描いた作品の中の女性の生き方や考え方を探る」ワークショップの2018年5月に続く第2回。北陸作品に関する専門知識や美術スキルは必要ありません。(事前予約制。ご予約時に希望日時と時間[30分または60分]をお知らせ下さい。)
会場(上記展示、ワークショップ他イベント):
ギャラリーVenere (富山県高岡市駅南5-3-1/JR高岡駅瑞龍寺口より徒歩1分) TEL 0766-25-0256
*高校生以上どなたでもご参加可能です。
*エントリーいただく頂く際に、お好きな、または気になる北陸の作品がありましたらお知らせ下さい(任意です)。
*市外、県外、北陸以外の方、グループでのご参加も歓迎します。
一般の方、社会人の方はもちろん、建築、都市計画、デザイン、美術系専攻の大学生の方のご参加も歓迎します。
*ボランティア・スタッフを募集しています。(シネマティック・アーキテクチャの手法や魅力に企画段階より接していただけます)
* English speakers are welcomed. Please have a look at our English website.(英語のできる方もご参加できます)
* ご質問もお気軽にどうぞ。
主催:
シネマティック・アーキテクチャ東京(CAT)
後援:
北日本新聞社/ 富山県文化振興財団 / 富山県 / 高岡市 / 高岡市教育委員会
協賛:
ギャラリーVenere
協力:
NPO法人プロジェクトひと・みち・まち
NPO法人 日本都市計画家協会
参考作品例(北陸の女性が描かれている作品)
映画
『ナラタージュ』(2017監督行定勲)、『真白の恋』(2016監督坂本欣弘)、『カノン』(2016監督雑賀俊朗)、『 人生の約束』(2016)、『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら』(2016監督チアン・ショウチョン)、『アオハライド』(2014)、『リトル・マエストラ』(2013監督雑賀俊朗)、『ほしのふるまち』(2011)、『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011)、『 死に行く妻との旅路』(2011)、『愛の流刑地』(2007監督水谷俊之)、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007監督吉田大八)、『 キトキト!』(2007)、『歌謡曲だよ、人生は』(2007)、『ONE 一つになりたい』(2007)、『 ストロベリーショートケイクス』(2006)、『8月のクリスマス』(2005),『透光の樹』(2004)、『 blue』(2003)、『DRIVEドライブ』(2002)、『螢川』(1987)、『 赤い橋の下のぬるい水』(2001)、『 幻の光』(1995監督是枝裕和)、『螢川』(1987監督須川栄三)、『恋する女たち』(1986監督大森 一樹)、『夜叉』(1985監督降旗康男)、『疑惑』(1982監督野村芳太郎)、『 海潮音』(1980監督橋浦方人)、『北陸代理戦争』(1977監督深作欣二)、『執炎』(1964監督蔵原惟繕)、『 非行少女』(1963監督浦山桐郎)、『越前竹人形』(1963監督吉村公三郎)、『 瀧の白糸』(1933)ほか
アニメ
『サクラクエスト』(2017監督増井壮一)、『グラスリップ』(2014監督西村純二)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、『 花咲くいろは』(2011監督安藤真裕)、『true tears』(2009)、『電脳コイル』(2007監督磯光雄) ほか
小説
『夜の隅のアトリエ』(2012)、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2005作本谷有希子)、『愛の流刑地』(2004作渡辺淳一)、『透光の樹』(2004)、『千年旅人』(1999作辻仁成)、『夜明け前に会いたい』(1996作唯川恵)、『 谷間の女たち』(1989)、『青桐』(1985)、『風の盆恋歌』(1985)、『 紺青の鈴』(1985作高橋治)、『浅の川暮色』(1978作五木寛之)、『幻の光』(1978作宮本輝)、『 螢川』(1977)、『神通川』(1968作新田次郎)、『野菊の露―能登麦屋節考』(1966作森山啓)、『 鶴のいた庭』(1957)、『七夕の町』(1951)、『美しき氷河』(1920作室生犀星)、『 義血俠血』(1894)ほか
マンガ
『月影ベイベ』(2013-2017)、『 ほしのふるまち』(2006)、『鱗粉薬』(2000)、 『異国の花守』(1997作波津彬子)、『 百鬼夜行抄』(1995-作今市子)、『まんが道』(1977)ほか
*参照する作品は、参加者の方が各自お選び下さい。上記リスト以外でも構いません。その際、一部でも高岡、富山、北陸が描かれているものも対象になります。
* 参照する作品は、参加者の方が選んでくださって構いません。その際に、一部でも高岡、富山が描かれているものも対象になります。ご希望の方には当方より推薦も可能です。
* こちらもご参照下さい。
(高志の国文学館 富山文学ゆかりの地)高志の国文学館には、当館ウエブサイトにはない、富山を舞台にした数多くの参考資料があります。ご興味のある方は足をお運び下さい。富山駅より徒歩10分。
( たかおか生涯学習ひろば 文学事典)
○関連作品紹介と解釈の手引き
ワークショップに関連する作品のいくつかを紹介します。自由な解釈や独断的な見立てをしていただくヒントや、特に女性登場人物に焦点を当てる見方、そこからまちづくりの考え方への結びつけ方など、本ワークショップのご理解に役立ててください。
『青桐』小説(1985)
木崎さと子による芥川賞受賞作『青桐』は、主人公・充江(みつえ)の視点を通して、死期を迎えた叔母を没落する富山県高岡市の旧家に重ね合わせ、それに、たくましく生い茂る青桐(梧桐)の樹の生命観を対比させ、思い出の大切さや、人は誰のために生きるのか、といった問題提起を織り込んだ中編小説。
いよいよ死期が近づき、都会から集まってきた家族たちと叔母や充江との間に現れた時の流れによるギャップが浮き彫りになります。ここで重要なのは、叔母は、なぜ手術を拒み、自然死を選んだのか、叔母の背後にあるのは“(これまで続いて来た)家”で、叔母はその家をどう扱おうとしたのか...。やがて明らかになる充江の秘めたトラウマと彼女は、それをどう受けとめたのか。そこで描かれる“家”を衰える地方都市の断面と捉えることができるのか。
『青桐』は英訳され海外でも読まれています。青桐の英名は、Phoenix Tree(復活の木)。舞台とされる高岡市の市街地から南に下った西藤平蔵(”にしとへいぞう”と地元の人は呼びます)は、黒瓦の大きな家々が並ぶ優雅な佇まいが印象的な田園地帯です。
なお、本ワークショップのタイトル「きっと、会うたこともない、誰かのため(に)」はこの作品の叔母の台詞から引用されています。( 木崎さと子)
( 木崎さと子)
対象作品紹介『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』小説(2005)本谷有希子作・映画(2007)吉田大八監督
芥川賞作家・本谷有希子による戯曲のオリジナルを本人が小説化、その後映画化。能登半島(石川県能登町)に暮らす和合清深は、漫画を描く暗い女性。ある日、両親が交通事故死したことを受け、清深の姉・澄伽が帰省する。そしてその姉妹が大騒動を巻き起こすというブラック・コメディ。地域コミュニティ、集合体としての家族、また、その中の夫婦、兄弟という繋がりの意味(「どうしてこうなったのか?」)を根本から考えさせる問題提起がなされています。
『サクラクエスト』アニメ(2017)増井壮一監督
「まちおこし=まちづくり」がテーマのアニメシリーズ。就活に失敗した女子大生・木春由乃がアルバイト派遣会社の手違いで、1年間、観光大使(国王)をすることになってしまった間野山町(富山県南砺市がモデル)で、しだいに、その町の人々や、土地の魅力に触れ、知り合った女子4人とともに、まちづくりに生き甲斐を見出して行くというお話。本作を制作したP.A. WORKSが、拠点を構える南砺市を現代日本の地方のまちの抱える現実(人口流出やシャッター商店街など)のアナロジーとして描いていることは、都市部にいる人間には分かりにくいことですが、社会の多くが今その方向を向いている、ということを教えてくれます。また、新しいまちを作るのは「若者」「バカ者」「よそ者」と言いながらも、彼女たちの努力をサポートするのは、意外にもその町に住む情熱的な団塊の世代の人々であったりします。ひきこもりや、都会での夢が破れた出戻り娘たちの「人の本当の価値=輝く部分」をお互いが気づき合うということの大切さも描かれています。
「まちづくり」というキーワードが一般化しつつありますが、特に都市計画や建築を志す若い人や学生たちに、「都市計画や建築は、何をめざすのか?」を考えてもらうため、『サクラクエスト』はぜひご覧頂きたい作品です。( 予告編)
『アオハライド』映画(2014)
咲坂井緒の原作漫画は、どこかの郊外都市、アニメ版は東京西効が舞台でしたが、映画版は、高岡市、富山市がメインです。
ストーリーを、たんに主人公の女子高生・吉岡双葉の、幼なじみの洸と結ばれるプロセスとしでなく、双葉によるクラスや友達関係の構築のプロセスとして捉えれば、彼女が“ひたむき” に周りをかき回すことで、(じつは彼女は、周りを調和させるバランス感覚も持つ)コミュニティやネットワークが創生されて行く、都市に必要な建築家や都市プランナーの原点”まちづくり行動”をイメージさせはしないでしょうか。( 予告編)
『true tears』アニメ(2008)
富山県呉西地区が舞台とされている珠玉のラブストーリー(制作は南砺市が拠点のP.A.ワークス)。主人公の高校生・仲上眞一郎の人間的成長と、絵本作家としての旅立ちを、彼をとりまく三人の少女がどのような方法で励まし、サポートしたのかを考えると面白いです。とくに、不思議な少女・石動乃絵(いするぎのえ)は、同じ北陸が舞台の泉鏡花(1873年- 1939)による悲恋小説『義血俠血』(1894)の水芸人(水芸人)・瀧の白糸をイメージさせます。true tears(本当の涙)とは誰の、何のための涙なのか、エンディングで分かります。( 主題歌PV)
『月影ベイベ』マンガ(2013-17)
『坂道のアポロン』の作者・小玉ユキによる、富山市八尾が舞台の、おわら風の盆と、東京から来た謎めいた少女をめぐる物語。
今は亡き建築家の母・繭子からおわら風の盆を教わった女子高生・峰岸螢子。異邦人・螢子と周りの人々がぶつかり合ううちに、閉ざされていた人々の心が次第に開かれて行きます。母・繭子の、娘や、恋人を含む人々や未来への心遣い、それは、建築家ゆえの構築的発想からではないかとさえ思えます。( 月影ベイベ)
8月のクリスマス』映画(2005)
韓国映画のリメイク版『8月のクリスマス』の舞台は高岡。不治の病を宣告された小さな写真館の店主・寿俊と小学校の代用教員由紀子のささやかな心の触れ合いです。静かに死を迎えるつもりだった寿俊、由紀子が本物の先生になる手助けをすることが生きる証となったのは、由紀子との出会いと彼女の存在に他なりません。
もう一つのポイントは、記憶を写し取る写真と形にはならない面影・イリュージョンのもたらすもの。寿俊が由紀子に見せる、僕の一番好きな風景は、金沢市犀川沿いのW坂からの眺め。写真のように彼女はこの眺めを自分だけの映像として持ち続けるのでしょうか。これは何を意味するのか、考えてみると面白いでしょう。( 予告編)
『ほしのふるまち』(映画・マンガ)2011
日本海のまちが背景の、東京の落ちこぼれ高校生・恒太郎と富山の薄幸の少女・渚との触れ合い。渚は、「私には、ここ(富山)しかない。」という状況にありながら「東京やと見えん星も、ここでは輝いて見えるんやね。それならこの町も悪くないね。」(人は必ずどこか輝く部分があって、それが見える場所がある)という台詞は、恒太郎をポジティブに励ますと同時に、そのまち(舞台は氷見と高岡)の価値をも示唆しています。
登場人物の生活圏がしっかり設計され、ディテールまで綿密に描き込まれた原秀則による原作と、不格好に悩みながら、それでもひたむきに生きる人々の姿を瑞々しく描いた映画。
ちなみに、原作には映画には描かれなかった、もうひとつの感動的な後日談があります。( 予告編)
「blue」映画(2003)
海辺の女子高(高岡市伏木高校)に通うキリシマとエンドウの数ヶ月の心の触れ合いを描いた作品。エンドウは、キリシマに美術や音楽の影響を与え、やがてキリシマが自分の才能に気づいて東京に出て行きます。しかしエンドウは「私には何も(才能を持た)ない」と言ってこの地にとどまります。ただ、これをポジティブに受取るなら、「何もない」エンドウを受けとめるのはこの町でしょうし、エンドウが、キリシマに送ったビデオも、彼女なりの感性を表現した“作品”で、それは、受取る人さえいれば、東京でなくとも、どこの町でもいい、と考えられはしないでしょうか。( blue本編)
『花咲くいろは』アニメ(2011)
石川県能登半島のある町を舞台に、そこで働く女子高校生たちが傾きかけた温泉旅館を救うために奮闘する物語。そこには、旅館だけではもったいないくらいな、まちづくりに生かせる多くのメッセージが鏤められています。旅館を「まち」に置換えれば、良いまちづくりのためには、コミュニティがどうあるべきか、そこで、まちづくり人や都市計画家、それに建築家が、それぞれどういう役割を演じるべきなのか考えさせてくれます。アニメ『true tears』と同様、富山県南砺市拠点のP.A.WORKS制作のアニメ・シリーズ。
『風の盆恋歌』小説(1985)
克亮(かつすけ)とえり子は、30年を超える愛を実らせるために、二人を結びつけた思い出の地、八尾町(富山市)を終の住処とします。人目を忍ぶその愛は静かなもの。北陸の女性・えり子は、東京にいる克亮に、日常の合間に作られた寡作な和歌で切ない心を伝えます。
二人の家の世話をする、八尾の老女・とめは、その様子を始めは冷静に見つめながら、やがて彼らの愛を支持し、真心の籠った助言さえするようになります。とめ自身の叶わなかった思いに加え、二人の信念が、たとえはるかに人生経験の豊富な彼女の心の琴線にも触れたからなのでしょうか。
八尾の町の路地は、人目を忍んで会うことのできる環境なのだ、という記述があります。おわら風の盆というハレとケのある八尾だからこそ生まれた特有の都市構造や建築形態なのかもしれません。
人が、出会い、そして信念を育み、持ち続けることの価値、そして寡少さが表す豊富さ(つまりLess is moreの理念)を美しい文章で伝えてくれます。
ちなみに、本作は、石川さゆりが歌った『風の盆恋歌』(1989)の下敷でもあり、作品紹介(3)のマンガ『月影ベイベ』(2013-17)の参考作品としてクレジットされています。
『夜の隅のアトリエ』小説(2012)木村紅美作
都会での生活に疲れ、過去を捨て去りたい女性が、さしたる理由もなくやってきた日本海の小都市(富山県高岡市と氷見市が舞台とされています)。他者との距離感を保ちながら生きようとする彼女が部外者でありながら、その地の人々と次第に触れ合って行く感情の変化が繊細なタッチで綴られます。作者の都市の観察眼は、「都市と人間」を描き続けたイタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニの冷徹なまなざしを思わせる、非常に「都市的な」小説でもあります。
その土地の女性たちが彼女にどう関わったか、そして彼女がどう影響を受けたのか、そんな着眼点で読むのがおすすめです。
つづく